【解決事例/058】男性の醜状障害につき逸失利益が認められ示談で解決をしたケース
依頼者属性 | 性別 | 男性 |
---|---|---|
年代 | 10代 | |
職業 | 学生 | |
事故態様と相談 | 事故場所 | 大分県臼杵市 |
事故状況 | 横断歩道を横断していたところ、右側からきた自動車に衝突された。 | |
相談のタイミング | 事故後すぐに相談 | |
相談のきっかけ | 保険会社とのやり取りなど全面的に弁護士に任せたい。 | |
怪我と後遺障害 | 傷病名 | 前頭骨骨折、多発顔面骨折、顔面挫創、外傷性視神経症など |
自覚症状 | 頭部の瘢痕、頭痛など | |
後遺障害等級 | 12級14号 | |
保険会社提示額 | 事前提示 | なし(保険会社が金額を提示する以前に弁護士が介入したため) |
獲得賠償金額 | 損害項目 | 最終受取金額 |
金額 | 約884万円 | |
備考 | 治療費などを含めた賠償総額約946万円 |
相談から解決までの流れ
横断歩道を歩行中、自動車にはねられ、前頭骨骨折、多発顔面骨折、顔面挫創などの怪我を負ったケースです。事故直後から相談にみえ、受任に至りました。
受任後の治療期間中の保険会社とのやり取りは、全て弁護士が行いました。
しばらく視力の低下などの症状がみられたため、視力障害での後遺障害の等級認定の可能性があると考え、眼科の主治医と面談し、事故と視力障害の因果関係の立証に必要な検査を依頼しました。幸い、その後、視力は回復したため、視力については後遺障害は問題となりませんでした。
事故から約9か月後、症状固定とし、被害者請求の方法で自賠責保険に対し、後遺障害の認定手続を行いました。その結果、前頭部の脱毛性瘢痕につき、「外貌に醜状を残すもの」として、自賠責保険の12級14号の後遺障害が認定されました。
後遺障害の認定後、相手方保険会社の弁護士と交渉を行いました。交渉では、外貌醜状の後遺障害によって生じた逸失利益の有無・程度が争点となりました。相手方弁護士には、外貌醜状を撮影した写真を送付し、類似の過去の裁判例について調査を行いました。その結果、自賠責保険が定める労働能力喪失率よりは低いものの、妥当な金額で示談することができました。
担当弁護士の振返りポイント
外貌醜状の逸失利益が争点となったケースです。外貌醜状障害は、一般的には身体的機能・能力を左右するものではないにもかかわらず、後遺障害等級上、上位の後遺障害等級に位置付けられ、労働能力喪失表の喪失率も高くなっているため、多くのケースで逸失利益が争点となります。この点について、裁判例では、認定の傾向がある程度はあるものの、未だ統一した見解が確立されるに至っていないというのが現状です。
裁判例の傾向としては、男性被害者の醜状痕については、会社役員、営業職等対人折衝が重視される立場の被害者を除けば、逸失利益性を否定した裁判例が多数であり、他方、女性は男性と比べて逸失利益性が肯定される傾向があります(ただし、労働能力喪失率については、後遺障害等級どおりの喪失率を認めない傾向にあります。)。
このように、外貌醜状の逸失利益性は争いとなることが多いので、適正な賠償金を得るためには、ポイントを付いた交渉を行う必要があります。ポイントは、障害の内容及び程度と被害者の職業との関係をしっかりと説明したうえで、仕事をしていく上で一般的に必要な対人関係や意思疎通に支障が生じているか(将来生じ得るか)を個別具体的に主張立証していくことです。
また、外傷醜状の逸失利益の交渉にあたっては、訴訟になった場合にどのような認定になるかを見極めることが、特に重要となります。先に述べたように、裁判例は、自賠責保険の労働能力喪失表どおりの喪失率よりも低い労働能力を認定することが多く、労働能力喪失期間も短く認定される傾向にあります。したがって、訴訟の結果の見極めを十分にせずに訴訟をした場合、想定よりも相当に低い金額の認定となることもあり得ます。被害者の醜状の程度と職務内容に照らして、過去の裁判例を多数参照し、訴訟をして判決になった場合の逸失利益を見極めることがポイントです。
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