【解決事例/051】初回非該当であったが、異議申立ての結果、3つの部位に14級9号の後遺障害が認定され、16年の労働能力喪失期間で示談ができたケース
依頼者属性 | 性別 | 男性 |
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年代 | 40代 | |
職業 | 会社員 | |
事故態様と相談 | 事故場所 | 大分市 |
事故状況 | 道路をバイクで走行中、右側の車線を走行していた自動車が合図もなしに左折をし、依頼者の車線に進入してきて衝突をした。 | |
相談のタイミング | 約1年1か月後 | |
相談のきっかけ | 保険会社から症状固定を打診され、今後のことについて相談をしたい。 | |
怪我と後遺障害 | 傷病名 | 右腓骨骨頭骨折、全身打撲、左膝半月板損傷など |
自覚症状 | 右足関節痛、腰痛、背部痛、右手関節痛など | |
後遺障害等級 | 併合14級(14級9号、14級9号、14級9号) | |
保険会社提示額 | 事前提示 | なし(保険会社が金額を提示する以前に弁護士が介入したため) |
獲得賠償金額 | 損害項目 | 最終受取金額 |
金額 | 約509万円 | |
備考 | 治療費などを含めた賠償総額約623万円 |
相談から解決までの流れ
バイクを運転中に事故にあい、腓骨頭骨折、膝半月板損調などの怪我を負ったケースです。保険会社から症状固定を打診され、今後の手続について知りたいということで相談にお越しになり、受任に至りました。
依頼者から、現在の症状、治療の経過、症状の推移などをお聞きしたところ、症状固定の時期であると判断し、自賠責保険に後遺障害の認定の手続を行うことになりました。主治医に後遺障害診断書を作成してもらうにあたり、依頼者の同席のもとで医師面談を行い、現在の自覚症状について医師に正確に伝えたうえで、後遺障害の診断にも立ち会いました。
後遺障害診断書の作成後、被害者請求の方法で自賠責保険に対し、後遺障害の認定の手続を行いましたが、初回請求は、いずれの症状についても非該当という結果でした。
初回請求の認定理由書によると、足関節痛、腰部痛、背部痛の症状は、事故当初からの症状であるとは認められないというものでした。しかし、依頼者によると、これらの症状は、事故当初からのものであるとのことであったことや、受傷内容からして事故当初から症状があった可能性が高いことから、医療記録などを取り寄せたうえで、後遺障害の初回等級認定に対する異議申し立てを行うことにしました。
医療機関から、カルテなどの医療記録を取り寄せて精査したところ、足関節痛については、初診時のカルテに症状として記載がされていました。また、腰部痛については、初診時のカルテには記載がなかったものの、事故当日に作成された救急経過記録に症状の記載がありました。そこで、これらの医療記録を新たに提出をして異議申立ての手続をとったところ、足関節痛、腰痛・背部痛、右手関節痛の3つの後遺症について、いずれも、「局部に神経症状を残すもの」として、自賠責保険の14級9号の後遺障害が認定されました(併合14級)。
後遺障害の認定後、保険会社と賠償金の示談交渉を行いました。本件では14級9号が3部位に認定された併合14級であったことから、通常の14級の場合よりも多額の逸失利益が認められるべきであると主張して、交渉を行いました。その結果、14級9号の事案では、裁判所の基準でも労働能力喪失期間を5年を限度とする傾向がある中、その3倍を超える16年の労働能力喪失期間を保険会社は認めました。その他、慰謝料についても裁判所基準の満額を保険会社は認められ、14級9号の事案としては、かなりの高額での示談で解決をすることができました
担当弁護士の振返りポイント
異議申立ての結果、3部位に14級9号の後遺障害が認定されたケースです。
自賠責保険の後遺障害は、①事故と因果関係が認められ、②受傷当初から一貫して継続していて、③将来においても回復が困難であると認められ、④労務に支障を及ばす程度の症状について認定されます。そのため、事故からしばらくして発症した症状については、事故と因果関係が認められないとして、後遺障害は認定されません。
本件の初回請求では、足関節痛と腰部痛・背部痛については、①事故との因果見解が認められないとして非該当となり、右手関節痛については、③将来においても回復が困難であるとは認められないとして、いずれの症状についても非該当という結果でした。
本件のように、骨折などの重傷で救急搬送をされたようなケースでは、被害者の訴える症状も多岐に渡り、又、重傷を負った被害者が初診時から症状の全てを正確に医師などに伝えることができない場合もあり、全ての症状が、診断書に漏れなく記載されていないケースもあります。このことに加え、自賠責保険の後遺障害の認定手続の際の必須書類として作成される自賠責保険様式の診断書は、1か月分をまとめて1通の診断書で作成する様式で、後からまとめて1か月分の情報を1枚の診断書に記載するため、症状の記載漏れが生じるケースがあります。このような場合には、カルテなどの医療記録を取り寄せ、診断書の不備をカバーすることで、後遺障害が認定されることがあります。
本件で、異議申立ての結果、足関節痛と腰部痛・背部痛の症状について14級9号の後遺障害が認定されたのは、まさに上記のようなケースでした。
右手関節痛については、将来において回復が困難であることは認められないとして初回請求は非該当でしたが、この点についても、カルテの記載内容に、診断書よりも詳しく症状の程度や症状の推移が記載されていたため、異議申立ての結果、将来においても回復が困難な症状と認められ、14級9号の後遺障害が認定されました。
また、本件では3つの部位に14級9号が認定されていたため、逸失利益についても、14級9号の場合の一般的な労働能力喪失期間(2年~5年)にとらわれずに交渉を行った結果、16年という労働能力喪失期間で示談ができました。