突然、交通事故に遭ってしまった方へ 今すべきこと・これから気をつけること

最終更新日2022.5.24(公開日:2022.5.24)

 

突然、交通事故の被害者になってしまうと、「事故後の怪我をした身体は回復するのか?」「回復しなかったらどうしたらいいのか?」などの不安や心配に襲われます。加害者側の保険会社の担当者の話をどこまで信用して良いのかもわからず、不安や心配を抱えたまま過ごされる方が多いのが実情です。

 

今回は、
・身体が回復するケース
・治療を受けても回復せず、後遺障害が残るケース

を念頭に、交通事故にあった後の流れや手続について解説します。

 

 

交通事故後の流れと手続

交通事故が発生した際の流れと必要な手続は、次のとおりです。

(身体が回復するケース、後遺障害が残るケースに共通)
・届出
・実況見分
・治療

(後遺障害が残るケース)
・症状固定
・後遺障害申請手続
・後遺障害等級認定
・示談交渉

 

届出

交通事故が起きたら、車の運転者は、負傷者の救護や第三者の被害を防止するために必要な現場処理を行ったうえで、事故が起きたことを警察に届け出なければなりません(道交法72条1項)。物損事故や自損事故であっても警察への届出は必須です。

事故届がないと、保険金請求に必要な「交通事故証明書」の交付を受けることができなくなったり、後遺障害の認定の際に不利になるなど、被害者の大きな不利益となります。したがって、事故にあったら、速やかに警察に届出を行いましょう。

 

相手方の情報の確認

相手方に確認して、分かる範囲で次の情報を控えておきましょう。

・相手方の自動車の登録番号(車のナンバー)、自動車の所有者の住所・氏名
・相手方の運転免許証の氏名・住所・生年月日・免許証番号
・相手方の自宅と勤務先の住所と電話番号
・相手方が勤務中であったかどうか
・相手方の自賠責保険と任意保険の保険会社名と各証明書の番号

 

事故状況の証拠保全

後に過失割合が争いになった場合などのために、事故状況を証拠として保全しておくことも重要です。お互いの車両が事故前に走行していた位置や、衝突した場所の違いなどで過失割合が異なってきます。
したがって、スマートフォンのカメラなどで、お互いの車両の破損状況や衝突した位置などを撮影しておくと良いです。

 

被害者の加入する保険会社への連絡

被害者自身が加入する保険会社への連絡も必要です。被害者自身にも過失がある事故の場合は、被害者側にも相手方に対する賠償責任が発生することがあり、この場合は、被害者自身が加入する保険会社の保険を使用して賠償を行う必要もでてきます。また、被害者自身に過失がない場合でも、弁護士費用特約や人身傷害特約など被害者自身の保険会社の保険を使用する場面も多いです。事故後に保険会社に事故の連絡をしていないと、これらの保険金の支払いを受けることができなくなる場合もあります。

 

実況見分

警察が事故現場に到着すると、

・衝突場所の距離
・被害者、加害者、目撃者から見た事故当時の状況

などを聞き、実況見分調書を作成します。実況見分調書は、『当事者』である被害者と加害者から『第三者』である警察が話を聞いて作成することから、事故状況を客観的に判断するために重要な資料となります。

救急車で緊急搬送するほどの重傷を負った場合には、医療機関での対応が優先されるケースが多いです。後日事故現場に出向き、実況見分を行います。

 

治療

交通事故により受傷した被害者は、怪我を治すために治療を受けます。

被害者にとっては、事故の症状に苦しみ、今までどおりの仕事や趣味ができなくなることに苦しみ、治るかどうかなど将来の不安に苦しむ、肉体的にも精神的にも最も辛い時期です。賠償の面からみても、治療期間中というのは、症状が治り切らなかった場合に備えた準備をしなければならない時期であり、賠償の準備期間ともいえる時期です。

 

医療機関を受診する

交通事故後は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。

交通事故治療を受けるには、症状が事故によって生じたものであることが必要です。しかし、事故から時間が経つと、症状が事故によって発生したこことを保険会社が否定して、治療費の支払いを拒否されることがあります。そのため、遅くとも事故から1週間以内には医療機関を受診しましょう。

医師の診断の際には、痛みやしびれなどの症状は、部位も含めて正確に伝えましょう。痛みやしびれがその時点では軽くても、初診時やそれに近い時期に、余すところなく医師に伝えることが重要です。事故から時間が経って初めて訴えた症状については、事故との関連性がわからないと言って、保険会社は治療費を支払わないことが多いです。

 

交通事故の治療費は加害者の保険会社が支払う

交通事故治療の治療費は、基本的には加害者が加入する自賠責保険会社から支払われます。つまり、被害者自身が窓口で治療費を支払う必要はありません。

通院する病院や鍼灸整骨院が決まったら、相手方の任意保険会社に連絡をしましょう。そうすると、連絡を受けた任意保険会社の担当者から、病院や整骨院に治療費は保険で対応する旨の連絡がいきます。任意保険会社への連絡をせずに病院や整骨院に行くと、窓口で治療費を請求されてしまいますので、注意してください。

 

健康保険を利用する場合

交通事故による怪我の治療であったとしても、健康保険を使用することが可能です。健康保険を資料した診療を保険診療、健康保険を使用しない診療を自由診療といいます。一般的に、保険診療の方が自由診療よりも治療費が低くなります。

被害者に過失がある場合は、健康保険を使用した方が、最終的に被害者の手元に残る賠償金は多くなるというメリットがあります(健康保険から支払われる治療費の給付額が過失相殺前に控除され、かつ、保険診療の方が自由診療よりも治療費が低いことがその理由です。)。

他方、健康保険を使用した場合、医療機関によっては、自賠責保険様式の診断書や診療報酬明細書を作成してくれないことがあるので注意が必要です(この場合、自賠責保険への後遺障害申請手続などに支障をきたします。)。したがって、健康保険を使用して治療を受ける場合には、事前に医療機関に自賠責様式での診断書や診療報酬明細書を作成していただけるかどうかを確認しておく方が無難です。

 

治療期間の目安

治療期間の目安は、怪我の程度や症状の経過によって当然に異なります。

ただ、後遺障害の認定を受ける場合は、一定の治療期間は治療をしたけれど症状が残ったといえる必要があるため、6か月は治療を行う場合がほとんどです。

治療の終了の仕方は、症状がほとんど治ってしまう「治癒」と、症状は残っているけれどもこれ以上はよくならない状態になった「症状固定」があります。

 

症状固定

症状固定とは、治療をしても症状が一進一退を繰り返して、治療効果がみられなくなった状態のことをいいます。

重要なのは、治療をしてもこれ以上よくならない状態となった時点が症状固定であり、症状が治っているかどうかは関係ないという点です。交通事故で怪我を負わされたのだから、完全に治るまで治療費を支払ってくれても良さそうですが、実際はそうではありません。治療効果がなくなった後の治療費は、不必要な治療であるといえるため加害者が治療費を支払う必要はないのです。

症状固定は、交通事故では、とても重要な概念です。症状固定前と症状固定後で、賠償の内容が変わるためです。

症状固定後は治療の必要性が認められないため、治療費や休業損害(治療のために仕事を休んだ減収分の損害)は認められず、通院慰謝料も症状固定日までを基準に算定されます。

症状固定後は、後遺障害が認められれば、後遺障害に基づく賠償金が支払われます(後遺障害が認めらない場合は支払われません。)。

 

後遺障害等級認定とは

後遺障害等級認定とは、被害者の労働能力が後遺障害によって失われているかどうか、失われている場合はどの程度失われているかを認定する手続です。第1級から第14級までの等級があり、140種類、35系列の後遺障害に分類されます。例えば、後遺障害等級1級であれば労働能力喪失率は100%であり、後遺障害等級14級であれば労働能力喪失率は5%とされています。

後遺障害の認定結果により、賠償金の金額が大きく変わります。

 

後遺障害等級認定の手続き

後遺障害等級認定を得るには、自賠責保険での手続が必要です。以下、手続の流れを解説します。

 

① 後遺障害診断書の作成

主治医に後遺障害診断書を作成してもらいます。

後遺障害認定のための審査は、被害者に直接面談をして審査をするわけではなく、後遺障害診断書をもとに行われる書面審査です。そして、治療期間中の診断書に記載があった症状でも、症状固定時に作成される後遺障害診断書に記載のない症状は治ったものとして審査がされます。そのため、後遺障害診断書は、後遺障害申請において最も重要な書類です。

 

② 必要書類の用意

・医師からの後遺障害診断書
・事故後に受けた治療についての資料(診療報酬明細書、診断書)
・画像検査資料
・交通事故証明書
・事故発生状況報告書

など、交通事故や治療に関する書類を用意します。これらの書類を加害者が加入する自賠責の保険会社に提出します。

症状固定から後遺障害申請の書類を提出するまでは、1~2か月の期間を要します。

 

③ 調査事務所からの審査

加害者の自賠責保険会社から損害保険料率算出機構自賠責損害調査事務所に資料が送られ、調査事務所が後遺障害の有無や程度を調査します。

 

④ 審査結果の通知

平均的に2~3か月で、後遺障害等級認定の審査結果が通知されます。

 

示談交渉

後遺障害等級認定の審査結果がでたら、加害者の加入する保険会社と賠償金額について示談交渉を行います(治療により症状が「治癒」した場合には、治療終了後に後遺障害申請の手続はせずに示談交渉に入ります。)。

治癒した場合には、治療期間に相当する損害を計算します。この損害を「傷害部分」といい、治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料などの損害項目があります。

後遺障害が認定された場合は、傷害部分に加えて、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益など後遺障害に基づく損害賠償も請求します。

示談交渉で賠償額が決まる場合の交渉期間は、概ね1~2か月程度です(もっとも、重傷案件や死亡案件で請求額が大きい場合は、示談交渉の期間が長くなることがあります。)。

 

裁判外紛争解決手続(ADR)

事故態様や事故前の収入額、休業の必要性などに争いがあったりすると、示談交渉による話合いだけで賠償金額が決まらないこともあります。このような場合は、第三者機関のもとでの話合いの手続を行うことが選択肢となります。このような手続を、「裁判外紛争解決手続(ADR)」といいます。

第三者機関が間に入り解決案を提示してくれるので、当事者同士で話し合いをするよりも解決の可能性が高くなります。また、ADRは、裁判所での正式な訴訟手続よりも早く解決に至ることがほとんどです。

交通事故のADRは、簡易裁判所で行う交通民事調停や交通事故紛争処理センターで行う和解あっ旋手続などがあります。これらの手続の平均的な手続期間は、4~6か月程度です。

 

訴訟手続

示談交渉やADRでも解決できない場合、最終的には、裁判所での正式な訴訟手続により解決を図ります。

後遺障害の評価などの医学的に難しい争点がある場合は、ADRでは結論を出すことができないため訴訟手続となることが多いです。また、双方の主張の隔たりが大きい場合も、話合いの延長であるADRでは解決ができず、訴訟となることが多いです。さらに、死亡事案や重度の後遺障害の事案など請求金額が大きな事案も、訴訟となることが多いです。

訴訟手続の場合、地方裁判所の第一審の手続だけで、平均すると1年程度の期間を要します。もっとも、適正な賠償金を得るために、時間をかけてでも訴訟手続を選択すべき場合は、そのようにすべきです。

 

困ったら、交通事故の専門家に相談しましょう

交通事故の後の流れや手続は、複雑で細かな点にまで注意を払う必要あります。また、交通事故被害者と加害者の保険会社の担当者は、交通事故の知識にも差があるため、被害者が保険会社と対等な交渉をすることは困難です。ただでさえ、交通事故で負傷をして大変な思いで治療をしている中、交通事故の手続を進めていくことは容易ではありません。

交通事故の手続は、専門家に任せて治療に専念することで、不安や心配もなくなり、最終的な賠償金額も大きくなります。

交通事故にあわれた場合は、できるだけ早く専門家に相談するのが良いです。

弊所は、これまで数多くの交通事故被害者の方を、事故後できるだけ早い時期からサポートしてきました。交通事故にあわれて、不安や心配が少しでもある方は、安心して治療に専念するためにも、今後の人生をより快適に過ごすためにも、まずは、一度、お問い合わせください。