治療についてのよくある質問
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交通事故に遭って怪我をしました。しかし、仕事が忙しかったので、まだ病院に行けていません。早く病院で診察を受ける方がいいでしょうか。
交通事故に遭われた場合、できる限り早く病院で診察を受けることを強くお勧めいたします。
この初診が遅れれば遅れるほど、事故と怪我の間の因果関係が疑われます。因果関係がないと判断されると、保険から治療費の支払が行われなかったり、後遺障害が認定されなくなったりする可能性があります。
どれほど時間が経過したら因果関係が疑われるかというのは、明確な基準はありませんが、事故日から1週間ないし2週間以内の初診がないと因果関係が否定される可能性が高まる傾向にあります。
ただし、これも明確な基準ではないため、これよりも早い段階で因果関係が否定されることもあり得ます。
そのため、交通事故に遭って身体に違和感がある場合には、できる限り早く病院で診察を受けましょう。 -
事故当日は痛みがなかったのですが、後々痛みが出てきました。病院に行ったほうが良いでしょうか。
なるべく早く病院に行くことをお勧めします。
専門家である医師に症状をしっかり診断して頂き、今後の治療方針を早期に立てていく必要があります。また、賠償上も初診時が事故時から空くことは得策ではありません。
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交通事故にあってケガをしました。事故にあった日から病院の初診日までの期間がどのくらい長くなると、事故とケガとの因果関係が否認されますか?
事故日から初診日までの期間がどれくらい長くなると、事故と怪我の因果関係が否定されるといった明確な基準はありません。
しかし、事故日から何週間も経ってから初診を受けた場合、自賠責保険はそれをもって「その怪我は事故に起因したものではない」として因果関係を否定することが考えられます。自賠責保険がこのような判断をした場合には、対人賠償責任保険(相手方の任意保険)も治療費の支払わない対応をとることが考えられます。そのため、交通事故に遭った場合には、数日以内に病院に行きましょう。
痛みが事故から数日経って現れることも考えられますが、その場合であってもすぐに病院で診察を受けてもらうことをお勧めします。 -
初診の診察の際に気を付けるべき点があれば教えてください。
まずは、痛む箇所やその時点での症状を余すことなく伝えましょう。
当初は軽微な痛みと思われていた箇所が、時間が経って治療を要するほどの痛みに至った場合、事故との因果関係が疑われるおそれがあります。しかし、初診時から軽微であっても痛む箇所があることを医者に伝えることで、カルテに残ります。カルテに初診時から痛む箇所であった旨の記載があれば、事故との因果関係を肯定する事情となりえます。そのためにも、どんな些細な痛みであっても医師に伝えておくことが大切になります。
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事故に遭いましたが、相手方が私の方が過失割合が高いと言って治療費を払ってくれません。どうすれば良いですか。
まず、通勤災害や業務災害の場合は、労災保険(一般企業等)又は公務員災害補償基金(公務員等)により、また、ご自身が被保険者となっている自動車保険に「人身傷害補償特約」が付帯されている場合は、同特約から治療費が払われる可能性がありますので、ご確認されることをお勧めいたします。 それ以外の場合は、ご自身の健康保険を利用して病院で受診し、基本的には病院窓口で立替を行った上で、相手方の自賠責保険会社へ立替治療費を請求することとなります。
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交通事故被害に遭い、通院しているのですが、治療費の支払いはどうすればよいのでしょうか?
加害者が任意保険に加入している場合、同保険会社から直接病院に支払われます。ただし、交通事故の態様や過失割合に争いがあるような場合には、支払ってもらえない可能性があります。その際には、いったんご自身で治療費を立て替え、保険会社に支払いを求めることになります。
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交通事故の治療費を加害者の任意保険会社が支払うことを「任意一括対応」というと聞きました。任意一括対応について教えてください。
一括対応とは、交通事故加害者側の任意保険会社が、被害者の治療費を直接病院に支払う対応のことをいいます。
被害者としては、治療費を立て替えたうえで、相手方(保険会社含む)に請求する手間を省くことができます。また、一括対応を行った保険会社は、自賠責保険に対して求償を求めるので、被害者としては自賠責保険と連絡を取る必要もありません。
しかし、保険会社が行う一括対応は、あくまで被害者のためのサービスの一環です。そのため、保険会社が「事故との因果関係」や「過失割合」について疑問を持つ場合には、一括対応を行わないことや、途中で一括対応を打ち切ることも考えられます。この場合には、被害者自身が、健康保険を利用しつつ、治療費を立て替え、後から保険会社に請求することが考えられます。
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交通事故に遭ったときは痛みがなかった部位に後から痛みがでてきた場合、治療費を支払ってもらうことはできますか?
交通事故に遭ったときは痛みがなかった部位に、あとから痛みがでてきて病院に通院した場合、その通院日数に応じて入通院慰謝料等を受け取ることができる可能性があるので、速やかに病院を受診してください。
また、受診の際はご自身の保険会社だけではなく相手方保険会社にも事前に連絡をいれておきましょう。
通常、交通事故によって怪我をした場合の治療費は相手方保険会社が病院に直接払ってくれることが多いですが、あとから痛みが出た場合は、相手方保険会社も被害者が通院すると思っていません。
治療費のトラブルを避けるためにも、病院に行く前に相手方保険会社に一報を入れておく方がいいでしょう。 -
整形外科で健康保険を使おうとしたのですが、交通事故の場合は使えないと言われました。本当ですか。
健康保険は、被保険者(健康保険の対象者)とその被扶養者(被保険者に扶養されている家族)を対象に、業務又は通勤災害以外の事由による病気や怪我などについて保険の給付を行う制度を言います。
したがって、交通事故により負傷した場合であっても、業務中や通勤途中の事故でない限り、健康保険を使用することは可能です。
なお、交通事故で健康保険を使用する場合には、加入されている健康保険に「第三者行為による傷病届」などの必要書類を提出しなければなりません。 -
交通事故に遭いましたが、保険会社から治療に健康保険を使ってほしいといわれています。保険会社の言うとおり健康保険を使ったほうがいいのでしょうか?
可能であれば健康保険を使うようにして下さい。
被害者に過失がある場合、健康保険を使わないと最終的な賠償額が少なくなるからです(被害者に過失がある場合、過失割合分について治療費が自己負担になりますが、自由診療では治療費が高くなり、最終的な賠償額から差し引かれる自己負担額が大きくなるためです)。
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交通事故で健康保険を使った場合の、メリット・デメリットを教えて下さい。
メリット
被害者側にも過失が出る場合、治療費も自己の過失割合に応じて被害者が負担します。保険診療のうち、健康保険の診療報酬単価は1点10円で、労災保険の診療報酬単価は1点12円です。これに比べて自由診療になった場合の診療報酬単価は、医療機関が自由に決定するため、場合によっては1点20円以上もの診療報酬単価となることもあり、診療報酬が高額になりがちです。
健康保険を使用すると、自由診療と比較して、治療費に関して自己負担額を少額に抑えることができるため、最終的に回収する損害賠償金を多くできます。
【具体的】 過失割合 7(加):3(被)、治療費100万円(自由診療)、休業損害20万円、通院慰謝料80万円(1)健康保険を使用しない場合
- ・全損害額 200万円(治療費100万円(2倍の診療報酬)、その他上記と同じ)
- ・過失相殺後 140万円(200万円×0.7)
- ・既払い金控除後 40万円(140万円-100万円(治療費))
- ・最終請求額 40万円
(2)健康保険を使用した場合
- ・全損害額 115万円(治療費15万円(通常の診療報酬50万円:3割負担)、その他上記と同じ)
- ・過失相殺後 80.5万円(115万円×0.7))
- ・既払い金控除後 65.5万円(80.5万円-15万円(治療費))
- ・最終請求額 65.5万円
デメリット
- ・交通事故で健康保険を使用した場合に、特段のデメリットはありません。
- ・ただ、保険診療のため、自由診療で受けられる診療内容と違いが出てくる場合があります。
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会社への通勤途中に交通事故に遭いました。この場合でも、健康保険は使えますか。
その場合、通勤災害として労災保険が使える場合は、健康保険法55条1項により、健康保険は使えません。そのためお客様が自営業者であるような場合を除き、健康保険ではなく、労災保険を使用して治療を受けることになります。
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仕事中交通事故に遭いました。この場合でも、健康保険は使えますか。
労災保険から給付を受けられる場合には、健康保険から給付を受けることができません(健康保険法55条1項)。 今回のように、仕事中に交通事故に遭って負傷した場合は、業務災害(労働者が業務を原因として被った負傷等を言います。)にあたり、労災より保険給付を受けることができますので、健康保険を使用することはできません。
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健康保険で通っていたから後遺障害診断書は書けないと言われました。本当ですか。
ほとんどの医師は、健保を利用していても後遺障害診断書の作成に対応してくださいます。
しかし、自賠責保険ではないから、という理由で作成を拒否される医師も極々一部にはいらっしゃいます。
医師向けに作成されている交通事故被害者への治療・対応に関する書籍でもそのような記載があることは確認しています。
いずれにしても、等級認定を受けるためには必要なものですから、医師にお願いして作成していただくことが肝要です。 -
保険会社から整骨院に行くには医師の許可が要ると言われました。本当ですか。
同意がなくとも通院することは可能ですが、保険会社が出さない以上、健康保険を利用して自費で通院することになります。
なお、後遺障害が残存した場合に認定を行う自賠責保険では、治療はあくまで医師が行うものという前提です。
後遺障害認定の際に不利にならないようにするためには、整形外科との併用や、医師による整骨院通院の指示が必要になります。 -
整形外科での治療にあまり治療効果を感じていません。整骨院で治療をすることはできますか?
整骨院に通って治療を受けること自体はもちろん可能です。
しかし、整形外科の医師の指示や許可がないまま、施術を受けた場合、その施術費を保険会社に支払ってもらうことは困難となることが考えられます。医師の指示・同意のない施術は、医学的に有効かつ相当と認められず、保険会社が治療費として支払うことを拒むことが考えられるからです。
以上から、整骨院に通い始める前に、①他の整形外科にセカンドオピニオンを求める、又は②医師から整骨院に通うことについての指示・許可を得るべきといえるでしょう。
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整骨院で治療を始めたので、整形外科には、もう通院しなくても良いですか?
整骨院への通院はやめることなく、整形外科と整骨院を併用することを強くお勧めします。
相手方保険会社に対して、「接骨院での施術費」を治療費として支払いを求める場合、その施術が医学的に有効かつ相当と認められる必要があります。
そのためには、医師に接骨院で施術を受けることの指示又は同意を得る必要があるとともに、定期的に整形外科の医師に経過状況を診てもらい、その有効性を確認してもらう必要があるからです。 -
整骨院での治療と整形外科での治療は、どのような違いがありますか?
整形外科での診察・治療は、医師が行います。また、レントゲン撮影やMRI検査などを行うこともでき、医学的に有効かつ相当な治療を受けることができます。一方で、整骨院での施術は、柔道整復師が手技療法や物理療法を用いて行います。マッサージやストレッチなどもしてもらうことができるため、すぐに効果を実感しやすいといえます。
しかし、「交通事故の損害として賠償を求めることが認められるか否か」で両者には違いがあります。
整形外科での治療費は、交通事故に起因して生じた損害として基本的に認められます。一方で、整骨院での施術費は、その施術が医学的に有効かつ相当と認められる場合を除き、交通事故に起因して生じた損害(治療費)と認められません。そのため、整骨院での施術費を相手方に賠償してもらうには、事前に医師から整骨院に通うことの指示・許可を得ることが重要となります。 -
鍼治療を受ける時の注意点を教えてください。
鍼治療は、血行を促進することで自然治癒力を高めたり、慢性的な痛みを軽減したりする効果があるといわれています。
もっとも、交通事故被害者の方が、鍼治療を受け、その施術費を相手方保険会社に請求しようと考えている場合には注意が必要です。鍼治療の施術費を相手方保険会社に支払いを求めても、基本的には認められないからです。相手方保険会社にその支払いを認めさせるには、その施術が医学的に有効かつ相当と認められることを示す必要があります。具体的には、予め医師から鍼治療を行うことの指示・許可を得ておくことが大切となります。
あなた(被害者)ご自身の判断のみで鍼治療を受けることは、その施術費用を相手方保険会社に支払ってもらえなくなる可能性が高まりますので、ご注意ください。 -
整骨院と接骨院に違いはありますか?
整骨院と接骨院は、名称が異なるのみで、施術内容や柔道整復師が行う点で違いはありません。
なお、交通事故により負った傷病を治すために整骨院(接骨院)に通う場合、その施術費を相手方保険会社に請求するには、事前に医師の指示・許可を得ておく必要があると考えられています。あなた(被害者)個人の判断で、整骨院に通った場合、その施術費は自己負担となる可能性が高まりますのでご注意ください。 -
交通事故のケガの治療として整体で治療をすることはできますか?
交通事故の怪我の治療として整体院で施術を受けること自体は可能です。しかし、整体院で施術を受けるにあたっては以下の点で注意が必要です。
まず、損害として相手方保険会社に施術費を請求する場合には、予め医師から整体院での施術について指示・許可を得ておく必要があります。医師の指示・許可なく施術を受けた場合、その施術は医学的に有効かつ相当と認められず、保険会社が支払いを拒むことが考えられるからです。また、保険会社から支払いを拒まれた場合、整体院では健康保険を使うことができないため、その施術費は全額自己負担となるリスクがあります。
以上から、あなた(被害者)ご自身の判断のみで整体院で施術を受けることは、特に金銭的にリスクが高いといえますのでご注意ください。 -
交通事故の治療を整骨院・鍼灸院でする場合、健康保険を使用することはできますか?
交通事故の治療を整骨院・鍼灸院で行う場合でも、「第三者行為による傷病届」という書式を健康保険組合に提出することで、健康保険を利用することができます。
もっとも、医師から整骨院・鍼灸院での治療を行うことについて指示・許可を得ていない場合、その治療費の自己負担分(治療費の3割)を相手方保険会社に請求することができなくなります。そのため、自己負担なく整骨院・鍼灸院に通う場合には、事前に医師の指示・許可を得て、そこでの治療が医学的に有効かつ相当なものであることを認めてもらうことが大切です。
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通院している整形外科の医師が整骨院での治療は認めない医師です。しかし、整骨院での治療もしたいです。どうすれば良いですか?
整骨院での治療を認めないお医者さんも実際にいらっしゃいます。しかし、医師の指示・許可なく整骨院の治療を受けた場合、相手方保険会社にその治療費の支払いを求めることは難しくなります。そのため、自己負担なく整骨院で治療を受けたい場合には、医師との相談の中で、整骨院での治療の必要性を説明し、許可を得た方がよいでしょう。
また、整骨院では健康保険を利用することができるため、一部の自己負担(3割)で整骨院に通院することも考えられます。もっとも、弁護士に相談し、医師や保険会社との交渉を行ってもらうことで、自己負担なく整骨院で治療を受けられる可能性があります。
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通院している整骨院の担当の柔整師さんから、「毎日通院するように」と言われいて、そのとおり、毎日通院しています。仕事もあり、毎日通院するのは大変なのですが、言われたとおり、毎日通院した方が良いでしょうか?
整骨院に通うことで、マッサージなどを受けることができ、怪我の痛みなども和らぐかと思います。
しかし、整骨院の柔道整復師さんからの指示に応じて毎日通院した場合、その施術費は、自己負担となる恐れがあるため注意が必要です。
整骨院の施術費を相手方保険会社に請求する場合、その施術が医学的に有効かつ相当と認められなければ、保険会社は支払を拒むと考えられます。そして、毎日の通院が「医学的に(有効かつ)相当」といえるには、医師の指示・許可が必須になるといえるでしょう。
以上から、毎日整骨院に通う前に、整形外科の医師にもその必要があるかを確認して、その指示に従うことが大切です。 -
通院先を変えることはできますか?
転院に合理性があれば、可能です。
「もっと職場から近い病院に替えたい」といった正当な理由があれば、保険会社も納得してくれます。しかし、正当な理由がないと治療を打ち切られることがあります。たとえば、A病院からB病院に移ったという場合、保険会社はA病院の医師から事情を聞くことがあります。そのような場合に、A病院の医師が「治療を打ち切りたい旨を患者に話したが納得しなかった」などと言えば、次の病院での治療を拒否される可能性が高いでしょう。
特に数ヶ月経ってからの転院は、症状固定を長引かせるために、被害者のいうことを聞いてくれる病院を選んでいるのではないかと疑われやすいでしょう。保険会社が、そうした意図での転院だと判断すれば、治療費を打ち切ってきます。
そのため、事故後に時間が経ってから転院することは、治療費を打ち切られるリスクが高いです。もしも病院の治療に疑問を持ったら、なるべく早い段階で転院を決意し、保険会社に、あらかじめ治療先の変更を申し出て、その必要性をしっかりと説明する必要があります。
また、転院が多いと、症状および治療の経過観察が正しく行えないという理由で、後遺症認定にマイナスの影響が出ることがありますので注意しましょう。
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病院を治療の途中で変えても良いですか。
治療の途中で病院を変えること自体は可能です。
しかし、転院してすぐに症状固定した場合、転院先の主治医が後遺障害診断書の作成を拒むケースがあります。症状固定時期が迫っている場合、転院は控えたほうが無難です。
なお、病院を変える場合には、必ず事前に保険会社の了承を得ておきましょう。 -
治療中に転院する場合の手順を教えてください。
転院までの手順としては、まずは、①現在の担当医に転院したい旨を伝えましょう。その際は、転院の理由を説明し、了解を得るとともに、紹介状を書いてもらえるとよいでしょう。次に、②転院先を探し、受け入れ可能であれば、紹介状を持参のうえ転院しましょう。
ただし、転院をすることで保険会社が治療費等の支払いを拒否する可能性が出てきます。保険会社には転院に当たって事前に連絡し、治療費の支払いを継続してくれるかの確認を取りましょう。
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保険会社が転院を認めなかった場合は、転院を諦めて元の整形外科に通い続けるしかありませんか?
まずは、①転院の理由(必要性)を再度保険会社に説明し、了承を得られるようにしてみましょう。この理由が合理的なものでなければ、保険会社を翻意させることは難しいので、今一度転院をする必要性を考えてみましょう(例 通院先の病院が遠いこと、治療の効果が出ていないこと)。
それでも保険会社が翻意しない場合には、②別の医師にセカンドオピニオンを求めたうえで、その医師から転院の必要性を説明してもらうこと、③弁護士に相談の上、保険会社との交渉をしてもらうことが考えられます。
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転院する場合に、元の整形外科からの紹介状は、必ず必要ですか?
紹介状がなくとも転院することは不可能ではありませんが、以下の点から、紹介状を作成してもらった方がよいと考えられます。
まず、①紹介状がある場合、保険会社が治療費の支払を継続して認めることが多いです。紹介状があることで、医師が認めた転院の合理的理由があることが示されるからです。
また、②紹介状があることで、病院間でのスムーズな治療の引継ぎが可能です。紹介状には、治療の履歴や検査結果も記載されていることから、転院先の病院でも無駄なく治療を引き継ぐことができるからです。
紹介状がなければ、保険会社が治療費を支払ってくれないリスクや転院先の病院とこれまでの治療の履歴等について逐一確認しながら通院することになるので、あなた(被害者)の負担は大きくなります。そういった観点からも、可能な限り紹介状を取得の上、転院の手続きを行いましょう。
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転院した場合のデメリットを教えてください。
転院した場合のデメリットとして、①治療に関する負担が生じることと、②金銭的な負担が生じることに分けることができます。
まず、①転院前と転院後の病院間で、これまでの治療履歴や検査結果などが十分に共有されない場合、必要な治療を受けられなかったり、重複する検査を受けたりする可能性があります。そのため、あなた(被害者)にとって、治療が負担となる恐れがあります。
また、②保険会社が転院を認めない場合、保険料の支払が行われなくなることがあります。実際に支払われなくなった場合、治療費は自己負担となるため注意が必要です。もっとも、転院に合理的な理由がある場合には、保険会社が転院を認めることもあります。医師に転院の相談をしたうえで、紹介状を書いてもらうなどして、保険会社を納得させることが大切です。
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ケガの痛みで運転がままならないので、タクシーで通院したいと思っています。タクシー代を請求できますか?
タクシー代が請求できるのは例外であり、基本的には、公共交通機関の運賃か自家用車のガソリン代の限度で支払われます。足の骨折といったタクシーを利用しなければならない事情がある場合には、タクシー代が認められやすくなります。
タクシー利用を予定している場合には、あらかじめ保険会社にタクシーを利用したいことを伝え、協議しておきましょう。
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自家用車で通院をした場合、交通費を請求できますか?
交通事故により負傷し、自家用車で通院することになった場合、そのガソリン代を通院交通費として、加害者(の保険会社)に請求することができます。
そして、ガソリン代は、「1キロにつき15円」として、それに「家と病院の往復にかかる距離」をかけ、算出することが多いです。もっとも、高速道路を利用した場合に、「高速道路料金」も請求できるか否かはケースバイケースです。下道では病院に通院するまで長時間運転となるなど、高速道路を利用せざるを得なかった理由がある場合には、その請求も認められやすくなるといえるでしょう。
なお、病院の駐車場が有料である場合には、その駐車場代も加害者側に請求することが可能ですので、その領収書は保管しておきましょう。 -
家族の看護・見舞いのために交通費を請求することはできますか?
まず、①交通事故被害者の家族が「看護(付添い)のために要した交通費」については、看護・付添いの必要性が認められる場合であれば、被害者本人の損害として加害者側に請求できるケースが多いです。最高裁判例の中には、交通事故により瀕死の重傷を負った被害者の娘が、「海外(モスクワ)から付添いのために緊急帰国した際の交通費」も損害賠償の対象となると判断したものがあります。このように看護・付添いのための交通費については、その金額が高額となる場合でも認められることが多いです。
また、②交通事故被害者の家族が「お見舞いのために要した交通費」については、ケースバイケースではあるものの、認められることはあります。そこでは、お見舞いの必要性・相当性が認められることが重要ですが、被害者の負った傷病の状況・緊急性、被害者と家族の関係性、被害者の年齢、お見舞いの頻度、家族としての心境などを踏まえて判断されます。
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医師から入院するかどうかは患者の意思に任せると言われました。入院しても大丈夫ですか。
基本的には問題ありません。ただ、後で保険会社が入院の必要性がなかったとして入院費の支払を拒むかもしれません。そのため事前に保険会社に連絡をとり、入院する旨を伝えておくべきでしょう。
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入院したいのですが、個室は使用できますか。
個室使用料は怪我の程度や治療内容などに応じて医師が必要と認めた場合のみ認められます。
そのため、まずは医師に相談して、個室の使用が必要であるとの診断書を作成してもらうといいでしょう。 -
交通事故に遭い、治療のため入院しています。この間家族が付き添ってくれているのですが、家族の交通費や休業損害については、相手方に請求することはできるのでしょうか。
傷害の内容や程度等により、必要かつ相当と判断された場合には入院付添費(原則日額6500円)や交通費が認められます。
医師の指示があったり、幼い子の場合には、認められやすくなります。
なお、休業の補償が認められなくても、お見舞いのための交通費が認められることはあります。 -
交通事故で重傷のケガをして入院治療をすることになりました。保険会社から、健康保険を使うように言われているのですが、保険会社のいうとおりに健康保険を使った方が良いのでしょうか。
保険会社としては、自由診療よりも健康保険を利用した治療の方が治療費が安くなり、賠償額も小さくなることから、あなたに健康保険を利用するよう伝えていると考えられます。健康保険を利用することにはメリット・デメリット双方が考えられます。その指示に従うかは慎重に判断する必要があります。
まず、メリットとしては、①あなた(被害者)側にも過失がある場合、相手方に請求できる金額が大きくなる点です。健康保険から支払われる給付額が過失相殺前に損害額から控除されるため、医療点数単価が低い健康保険を利用していた方が、最終的に請求できる金額が高くなるからです。
また、②仮にその治療費が自己負担となった場合に、その負担額を3割に軽減することができる点です。もっとも、本件のように、保険会社が認めている怪我の治療費につき、自己負担を強いられることは考えられにくいです。そのため、自己負担となるリスクが高い場合以外は、この点を考慮する必要性は低いといえます。
一方で、健康保険を利用するデメリットとしては、①病院が交通事故治療について健康保険利用を認めない場合があることです。このような病院の場合、「自賠責診断報酬明細書」等の書類を作成してくれず、後遺障害申請の場面などで支障をきたすおそれがあります。後遺障害等級の認定の有無は賠償額に大きな差をもたらすので、大きなデメリットとなります。また、②仮に健康保険を利用できるとしても、「第三者行為による傷病届」の提出が要求されるため、手続き的な負担を強いられます。
以上から、あなた側に過失がなく、加害者側の保険会社も治療自体は認めている場合には、病院が健康保険の利用を認めているときを除き、そのまま自由診療を選択する方が無難といえるでしょう。ただし、後の損害額に大きな影響をもたらしうる判断にはなるため、医師だけでなく、弁護士に相談することもとても有効です。
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交通事故でけがをして治療中ですが、加害者側の保険会社の担当者が「症状固定」という言葉をよく使ってきます。「症状固定」とはどういう意味でしょうか。
症状固定とは、医師によるけがの治療の結果、これ以上治療をしても症状の改善が見込めない状態をいい、その症状固定の状態になった日を症状固定日といいます。症状固定の時点で、けがを原因とする何らかの症状が残っている場合、その症状は「後遺障害」となります。
賠償実務においては、症状固定日までが治療期間であり、症状固定日後は治療終了後の後遺障害という扱いになります。そのため、症状固定日は、(1)損害算定のための時的区分となる (例えば、負傷により働くことができなかった損害は、症状固定日以前については休業損害として、症状固定日以後については原則として後遺障害による逸失利益として検討されることになります)、(2)いわゆる中間利息控除の起算点となる、(3)後遺障害による損害についての消滅時効期間の起算点となる、(4)症状固定後に支出した治療費は原則として損害として認められないことになるなど、損害賠償実務において、重要な意味を持っています。
なお、この症状固定の時期については、治療費の打ち切りにも関係することから、加害者の加入する保険会社と被害者側の間でよく争いとなります。
納得がいかないようであれば弁護士に相談されることをお勧めします。 -
身体がまだ痛いのですが、症状固定しなければならないのでしょうか。
受傷内容と症状経過、治療期間によります。
通常、頚椎捻挫等の神経症状の場合、適切な治療を半年程度受けても症状が後遺しているのであれば、症状固定をし、後遺障害の認定を受けるべきでしょう。 症状改善のために治療を受けたにもかかわらず、残っている症状がまさに、後遺障害だからです。
ただ、この残った症状が、自賠責保険の規定する後遺障害等級に該当するかどうかは、後遺障害認定を受けなければなりません。 -
交通事故遭い、治療中だったのですが、相手方保険会社から「治療費の支払の打ち切る」と伝えられました。保険会社が症状固定と判断した場合、もう保険会社に治療費を支払ってもらうことはできないのでしょうか。
「症状固定」は、治療をこれ以上継続しても症状の改善が見込めない状態のことを言います。
保険会社が治療費の支払を打ち切った場合、これまで行っていた一括対応(保険会社が治療費を直接病院へ支払うサービス)をやめる対応をとったことになりますが、必ずしもこの時点で症状固定に至っているとは限りません。一括対応をやめることは保険会社の判断にすぎず、医師が判断する症状固定時期とは必ずしも一致しません。
そのため、①症状固定に至っていなかった場合には、保険会社に対し、実際の症状固定時までの治療費の支払いを求めることができます。もっとも、この場合であっても、被害者の方で一旦は治療費を立て替えなければなりません。
一方で、②一括対応取りやめの時期と症状固定時期が一致する場合があり、それ以降の治療費は被害者負担となります。
以上のことから、一括対応が取りやめられた時点で、医師の見解を聞き、自費での通院を継続すべきかを判断することが必要となります。 -
保険会から治療費の立替払いを打ち切ると連絡がありました。弁護士が交渉をして、治療費の立替払いを延長することができますか?
個別の事案の状況にもよりますが、弁護士が保険会社との連絡・交渉を行うことで、治療費の立替払いが延長されることは十分考えられます。弁護士は、保険会社の打ち切り理由(たとえば、治療が必要以上に長期化しているなど)を聞いたうえで、被害者(依頼者)の症状と傷病名などを確認したり、医師との面会を行ったりします。これを踏まえて、妥当な治療プランを検討し、保険会社にも共有して、治療費の支払を継続してもらうように交渉を行います。保険会社との交渉の経験が豊富な弁護士は、保険会社を納得させる交渉のノウハウを有しているといえるでしょう。
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保険会社が治療費の立替払いを一方的に打ち切ってきました。保険会社を訴えて、治療費を立替え払いをさせることはできませんか?
症状固定前の治療費については、加害者の保険会社に対して支払うことができます。
「症状固定」とは、治療をこれ以上継続しても、症状の改善が見込めない状態のことを言いますが、この状態にあるか否かは医師が判断します。
そのため、保険会社が治療費の立替払いを打ち切った場合であっても、必ずしも症状固定に至っているとは限りません。したがって、このような場合には、症状固定に至るまでの治療費は、後から保険会社に対して請求することができます。 -
交通事故でむちうちのケガをし、通院治療を続けています。病院や整骨院に通院してリハビリをした日は症状はやわらぐのですが、また次の日は症状がぶり返します。治療を受けた日は症状が緩和して、次の日には、また元に戻るということの繰り返しです。治療はいつまで続けるのが良いのでしょうか。治療のやめ時の判断をどうすれば良いのかわからないので教えてください。
加害者の保険会社に治療費の負担を求めることができるのは「症状固定時」(治療をこれ以上継続しても、症状の改善が見込めない状態)までであるため、漫然と治療を続けると、症状固定後も治療を続けてしまい、治療費が自己負担となるおそれがあります。むち打ちの治療期間としては、一つの目安として6か月とされていますが、事故態様や衝撃の強度、治療方法などによって前後することが考えられます。
そのため、現在の治療の効果に疑問がある場合には、医師に相談したうえで、より適切な治療がないかを確認しましょう。セカンドオピニオンとして別の医師に確認する方法もあります。
また、加害者の保険会社としては、治療をしても症状をぶり返す状況にある以上、治療費の立替払いを打ち切ってくる可能性があります。打ち切りを避けるには、治療の効果があることを説明し、納得してもらう必要があります。むち打ちの場合、保険会社としては遅くとも6か月を経過する頃には打ち切りの連絡をしてくることが考えられます。以上のことから、まずは「医師の見解を踏まえた治療」を継続することが大切です。また、保険会社からの打ち切りの連絡などがあり、その対応に苦慮した場合には、弁護士に相談し、保険会社との交渉を依頼することも一つの手段といえるでしょう。
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症状固定の判断は誰がするのですか。
医学上の判断としては、医師がお客様の症状を見て、判断します。
ただ、一括対応に応じる期間の判断は、保険会社がしますので、治療期間の判断はまず保険会社が一方的に行ってくるという事実もあります。
その後、適切な治療期間はいつまでかを争う中で、最終的には裁判所が症状固定日を判断することになります。 -
症状固定と診断された後も病院に行ってもいいのですか。
行っていただいてかまいません。
症状固定後の治療費に関しては、原則として相手方から回収することはできませんが、後遺障害の残存を立証するためなどに必要となることもあるので、領収証はきちんと保管しておいてください。
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交通事故に遭って治療を続けてきましたが、保険会社から症状固定と言われました。症状固定になるとどうなるのですか?
症状固定とは、治療を続けてもこれ以上症状の改善が見込めない状態のことを指します。
症状固定までは、保険会社から治療費・休業損害が支払われますが、症状固定になると、治療費・休業損害の支払いが止まります。
症状固定後は、慰謝料や、後遺障害が残る場合は逸失利益として、まとめて保険会社から支払を受けることになります。症状固定時点で症状が残り、後遺障害認定の可能性があるときは、主治医の先生の後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害の申請を行う必要があります。
保険会社との示談交渉は、後遺障害の判断が出た後に行います。 -
小学生の息子が、交通事故で大腿骨を骨折する重傷のケガをしました。手術も無事に成功し、経過も良好で、治療は終了となりました。ただ、成長の過程で、高校生くらいになってから再手術が必要であると主治医の先生から言われています。症状固定としてしまうと、将来、再手術が必要となった時の治療費は自己負担になるのでしょうか?
たしかに「症状固定後の治療費」については、原則として加害者の保険会社に請求することはできません。もっとも、これまでの裁判例を踏まえると、症状固定後の治療費(将来の手術費・治療費)についても、その支出が相当なものといえる場合には、加害者に対して請求することができるケースがあります。
小学生の息子さんが事故に遭われ、大腿骨を骨折する怪我を負ったことですが、一旦は治療が終了しておりますので、症状固定がなされた状況にあると思われます。もっとも、これから成長期を迎えるため再度の手術の必要性があると主治医に判断されていること、大腿骨という歩行のために不可欠な部位に重傷を負っていることなどを踏まえると、その手術費用の支出も相当なものに当たる可能性があるといえます。
「症状固定後の治療費」を加害者の保険会社に請求することは、容易いことではありませんが、賠償金額に大きな差が生じます。ぜひ弁護士にご相談ください。