後遺障害とは?症状と等級、認定手続きについての基礎知識
最終更新日2022.5.24(公開日:2021.5.6)
交通事故で怪我をした後、治療を続けたけれども、症状が治り切らずに残ることもあります。後遺症の種類や程度によっては、仕事をすることができなくなったり、仕事を変えざるを得なくなり、収入が減少したりすることもあります。このような場合、自賠責保険の後遺障害の認定を受けて、後遺症が残ったことについての賠償金をきちんと支払ってもらうことがとても大事になります。
今回の記事では、交通事故による後遺障害、後遺障害の手続と後遺障害等級について解説させていただきます。
目次
後遺障害とは?
まず、「後遺症と後遺障害は違う」という点を理解する必要があります。
「後遺症」とは、「病気や怪我が完治せずにのこった機能や形態の障害」のことをいいます。医師や患者さんが考える一般的な意味での後遺症です。
これに対して、交通事故の賠償の際に用いられる「後遺障害」は、後遺症よりも狭い意味の言葉です。
後遺障害は、①交通事故のケガにより残ったもので、②将来にわたって回復することが困難で、③医学的に認められ、④労働能力の喪失を伴う症状のことをいいます。
つまり、「後遺症」の中でも、上記の①から④の4つの条件を全て満たした「後遺症」に限って、賠償の対象となる「後遺障害」と認められます。
後遺障害に対する賠償
後遺障害が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益などの後遺障害分の賠償額が上乗せして支払われます。
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する賠償で、後遺障害の等級ごとに金額が定められています。
逸失利益とは、後遺障害によって仕事に支障が生じて収入が将来にわたって減ってしまうことに対する賠償です。逸失利益は、「基礎収入(原則として被害者の事故前年の年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間」の計算式で算定されます。
後遺障害等級
後遺障害等級は、1級から14級まであり、被害者の労働能力が後遺障害によってどれだけ失われたかで区分されています。
自賠責保険における各等級の保険金額と労働能力喪失率(労働能力が失われる程度)は、次の表のとおりとなっています。
等級 |
自賠責保険
(共済)金額
|
労働能力喪失率 |
第1級 | 3,000~4,000万円 | 100% |
第2級 | 2,590~3,000万円 | 100% |
第3級 | 2,219万円 | 100% |
第4級 | 1,889万円 | 92% |
第5級 | 1,574万円 | 79% |
第6級 | 1,296万円 | 67% |
第7級 | 1,051万円 | 56% |
第8級 | 819万円 | 45% |
第9級 | 615万円 | 35% |
第10級 | 461万円 | 27% |
第11級 | 331万円 | 20% |
第12級 | 224万円 | 14% |
第13級 | 139万円 | 9% |
第14級 | 75万円 | 5% |
(なお、自賠責保険金額は、被害者に支払われる損害の一部の支払いであり、自賠責保険金では足りない分は加害者の任意保険会社が支払いを行います。)
後遺障害の認定手続
認定機関
後遺障害の認定は、加害者が加入する自賠責保険会社が行いますが、後遺障害認定の申請を受け付けた自賠責保険会は、申請書類を損害保険料率算出機構自賠責損害調査事務所に送付し、この調査事務所が後遺障害の有無や程度を審査します。審査終了後、調査事務所は調査結果と申請資料を自賠責保険会社に返却し、自賠責保険会社から被害者へ審査結果が通知されます。
審査方法
後遺障害認定のための審査は、調査事務所が被害者と直接面談し、症状などについて聴取して判断するわけではなく、後遺障害診断書などの申請資料一式のみをもとに行われる書面審査です。したがって、診断書に症状の記載漏れなどの不備があると、後から挽回することが難しく、適切な後遺障害が認定されないことになります。
被害者請求と事前認定
後遺障害認定の申請は、被害者側で行う方法と、加害者側で行う方法があります。被害者側で行う後遺障害認定申請は被害者請求といい、加害者側で行う申請は事前認定といいます。
事前認定は、加害者側の保険会社が申請を行うので、被害者にとって有利な資料の提出がされなかったり、逆に、被害者にとって不利な資料が提出されるリスクもあります。また、事前認定では、後遺障害の認定で最も重要な書類である後遺障害診断書の記載内容を確認できないことが多いというデメリットもあります。
被害者請求は、被害者自身が後遺障害認定申請の資料を作成するので、後遺障害認定に有利な資料を添付することができます。また、被害者請求では、申請前に後遺障害診断書の記載内容を確認することができるので、後遺障害診断書への追記や修正を主治医に依頼することもできます。
異議申立て
後遺障害認定結果に対して不服がある場合は、自賠責保険会社に対して異議申立手続を行うことができます。
異議申立てによって認定結果を変更させるためには、前回の後遺障害の認定理由を的確に把握することが必要です。そのうえで、前回の認定の理由を、どのようにしたら覆せるかを検討して、そのための新たな資料を揃えていきます。
後遺障害等級認定を受けるなら、交通事故の専門家に相談しましょう
交通事故で症状が治り切らずに残った場合には、適切な後遺障害の認定を受けることが、とても重要になります。
ただ、後遺障害の認定を適切に受けることは容易なことではありません。後遺障害認定の申請を適切に行うためには、認定を得るに必要な医学的知識があることと、自賠責保険の認定基準に精通していることが必要です。
「自賠責保険で適切に後遺障害の認定を受ける」という部分が、交通事故で適切な賠償を得るために最も重要であり、かつ、最も難しいところともいえます。
弊所では、自賠責保険で適切な後遺障害の認定を受けるという点に特に力を入れて取り組んできました。全ての事案で被害者請求の方法で後遺障害認定の手続を行い、ノウハウを蓄積しています。また、医師面談や診察同行を積極的に行い、医師の協力のもと、できる限り被害者に有利な医証を揃えて手続を行っています。交通事故による後遺症に悩まれている方は、是非、一度お問い合わせください。