40代会社員男性の人身事故で、傷害部分につき裁判所基準での示談をすることができた事例

非該当,頚椎捻挫・外傷性頚部症候群

事故発生

 依頼者は、交差点で信号待ち停車中に後続車に追突される交通事故にあい、外傷性頚部症候群のケガを負いました。
 

治療経過

 依頼者は、外傷性頚部症候群からくる頚部痛の治療のため、事故の直後から整形外科で通院治療を行っていましたが、事故から約3か月後からは整骨院への通院をメインに治療を続けました。
 その後、事故から約6か月が経過した頃から背中の強い痛み・右手の痺れの症状が出てきました。これらの症状について、主治医の所見は、事故との因果関係は認められないというものでした。依頼者は、保険会社の担当者同席のもと、今後の治療について話し合いを行い、事故によるケガについては、症状固定とし、新しく出た症状については、健康保険を使用して入院治療をすることにしました(この入院治療費は、依頼者の契約する任意保険の人身傷害特約から支払われることになりました。)。
 その後、依頼者は、自賠責調査事務所に、加害者側の任意保険会社をとおして後遺障害等級の認定の依頼(事前認定)をしましたが、結果は、非該当でした。
 

相談・依頼のきっかけ

 依頼者は、非該当の結果通知後に保険会社から提示された示談金額が正当な金額であるか知りたいということと、非該当という等級認定結果に不満があるとのことで相談にみえられました。

 相談時点での保険会社の提示金額が任意保険会社の基準で算定した低い金額であったことと、等級認定の結果につき異議申し立てなどを行うべきかどうかについてカルテなどを取り寄せたうえで検討する必要があったことから受任をしました。
 

当事務所の活動

(1)等級認定結果についての検討
 等級認定結果に対して、異議申し立てなどをする必要があるかどうかを検討するために、医療機関からカルテなどの医療記録の取り寄せを行い検討しました。検討の結果、訴えている自覚症状について初診時からの一貫性がないこと、整形外科への実通院日数が相当に少ないこと、自覚症状を裏付ける神経学的所見がないことなどから、異議申立てにより等級認定を受けることが困難であることがわかりました。
(2)裁判所基準での示談交渉
 相談時点では、保険会社からは、任意保険会社基準で算定した約70万円の金額での示談の提示がなされていましたが、裁判所基準での支払いを求めて示談交渉を行いました。
本件における特殊な事情として、症状固定日の翌日から、頚椎椎間板ヘルニアの入院治療を行っているということがありました。本件の事故によるケガが外傷性頸部症候群であったことからすると、入院治療についても事故によるケガのための治療として処理することもできたと思われました。そこで、症状固定後の入院治療分についても慰謝料を支払うべきであると主張して交渉を行いました。その結果、症状固定後の入院治療分についても慰謝料金額の算定について考慮に入れることとなり、裁判所基準以上での慰謝料の支払いについて合意ができました。
 

当事務所が関与した結果

  保険会社の当初金額である約70万円から、約38万円増額し、約108万円での示談をすることができました。
 

解決のポイント(所感)

 一般に、後遺障害がない案件の場合、賠償金額自体が低額であるため、弁護士費用を支
払ってまで弁護士に依頼するメリットが少ない事案がほとんどです。今回の事案も、後遺
障害の等級認定結果が非該当の事案でしたが、依頼者が弁護士費用特約を付けていたこ
とから受任をすることができ、その結果、裁判所基準での示談をすることができました。
 依頼者は、後遺障害の等級認定結果(非該当)についても不満を持っていたため、異議
申立てにより等級の認定を受けることができないかをカルテなどを取り寄せて検討しま
した。その結果、先に述べた理由で、等級の認定を受けることは困難であることがわかり
ました。結果として非該当を前提とした示談でしたが、医療記録を取り寄せたうえで等級
の認定は難しいことを説明することで相談時に抱いていた認定結果に対する漠然とした
不満は解消され、納得したうえで示談をすることができました。後遺障害の等級認定は、
それが妥当なものであるかどうかについての判断が難しく、必要な調査を行ったうえで、
この点についての説明を十分に行うことも、納得した解決のために重要です。

交通事故に遭われた方、ご家族を亡くされた方へ