【解決事例/067】むちうちの症状につき、異議申立ての結果、14級9号の後遺障害が認定された事例

14級,兼業主婦,異議申立,頚椎捻挫・外傷性頚部症候群

依頼者属性 性別 女性
年代 30代
職業 家事従事者(兼業主婦)
事故態様と相談 事故場所 大分市
事故状況 信号待ちで停車中に後続車に追突された。
相談のタイミング 事故から約5か月後
相談のきっかけ 保険会社から治療を打ち切ると言われたため相談したい。
怪我と後遺障害 傷病名 頚椎捻挫
自覚症状 項頚部痛、頚背部痛、肩から上腕にかけての鈍痛、頭痛など
後遺障害等級 14級9号
保険会社提示額 事前提示 なし(保険会社が金額を提示する以前に弁護士が介入したため)
獲得賠償金額 損害項目 最終受取金額
金額 約330万円
備考 治療費などを含めた賠償総額約410万円

相談から解決までの流れ

◆事故からご依頼までの流れ
 信号待ちで停車中に後続車に追突され、頚椎捻挫のケガを負ったケースです。
 事故から約5か月後に、保険会社の担当者から治療を打ち切ると言われたことで相談にみえられ、ご依頼いただくことになりました。

 

◆治療から症状固定まで
 受任後、保険会社の担当者と、治療期間の延長について交渉を行いました。治療状況や症状の経過を保険会社の担当者に細かく伝えて交渉を行った結果、受任時点から約4か月治療の延長が認められました。その後、ある程度症状も安定したことから、事故から約10か月後に症状固定となりました。
 症状固定の時点で、項頚部痛、頚背部痛、肩から上腕にかけての鈍痛、頭痛などの症状が残っていたため、自賠責保険に対し、被害者請求の方法で後遺障害の等級認定の申請を行いましたが、認定結果は非該当でした。

 

◆異議申立て
 依頼者の症状の内容・程度、症状の推移、症状を裏付ける所見、治療状況などからすれば、異議申立てを行うことで後遺障害の認定の可能性はあると考えました。そこで、依頼者が治療を受けた医療機関から診療録(カルテ)などの医療記録一切を取り寄せたて検討したうえで、整形外科の主治医に、症状の推移等などについての照会文書に所見をご記載いただくなどしました。このようにして収集した新たな医証などをもとに、後遺障害の等級について弁護士が意見書を作成して、自賠責保険に対し、異議申立てを行いました。その結果、項頚部痛、頚背部痛、肩から上腕にかけての鈍痛、頭痛の症状について、「局部に神経症状を残すもの」として、14級9号の後遺障害が認定されました。

 

◆示談交渉
 等級認定後、保険会社の担当者と最終的な示談金額について示談交渉を行いました。依頼者は、兼業主婦であったため、家事従事者としての休業損害と逸失利益の金額について保険会社は当初争う姿勢でしたが、交渉の結果、裁判所基準に近い適正な金額で示談をすることができました。

 

担当弁護士の振返りポイント

 むちうちによる後遺症について、異議申立ての結果、14級9号の後遺障害が認定されたケースです。


 むちうちは、交通事故によるケガの中で、最も数が多いケガといえます。交通事故で負うケガの中では、軽傷の部類ですが、後遺障害の認定についていえば、骨折などの重傷の案件よりもむしろ難易度が高いと感じます。その理由は、骨折や脱臼などのケガと異なり、画像検査などの客観的な検査では異常がみつからないことがほとんどだからです。そのため、症状を裏付けるものが、被害者の自覚症状の訴えのみということも多く、認定を得るに足りる材料が乏しいことも多いのです。

 

 また、自賠責保険では、各後遺障害の認定につき、公表されているもの公表されていないものも含め、細かな認定基準があります。むちうちの14級の認定基準は、「この要件をこの要件をみたせば認定される」という明確なものではなく、「様々な事情を考慮した総合判断」のような判断枠組みで認定されています。そのため、認定にあたる担当者に一定の裁量があり、その結果、認定にも一定のぶれのようなものも生じます。
 加えて、「この要件を満たせば認定される」という要件はありませんが、「これを満たしていなければ認定されない」、「これがある場合は非該当」という基準は、たくさんあります(そして、そのような基準を自賠責は公表していません。)。このような非公表の基準も理解していなければ、適切な異議申立てはできません。

 

 このような難しさのある、むちうちの14級の後遺障害の認定は、自賠責の認定基準や認定の仕方をしっかりと押さえ、不足している資料については、医師面談や医療照会を行ったうえで資料を補充していくなど、丁寧な申立てを行うことが必要です。