【解決事例/077】高次脳機能障害で後遺障害1級が認定され、約3億7000万円の賠償が認められた事例
事故態様 | 男子中学生が、自転車で走行中に車にはねられた事故 | |
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事例の特徴 | 後遺障害1級、高次脳機能障害、逸失利益、将来介護費 | |
属性 | 中学生、10代 | |
症例・受傷部位 | 急性硬膜下血腫、脳挫傷、両肺挫傷、頭蓋顔多重骨折、外傷性水頭症等 | |
後遺障害等級・死亡事故 | 後遺障害1級(高次脳機能障害) | |
主な損害項目 | 受任前 | 受任後 |
傷害慰謝料 | 提示なし。 | 約400万円 |
逸失利益 | 約4600万円 | |
後遺障害慰謝料 | 約3000万円 | |
将来介護費 | 約9000万円 | |
自賠責保険金受領額 | 4000万円 | |
治療費を除く賠償金総額 | 3億7300円 |
交通事故の状況
自転車で走行中の被害者が、前方不注視の車両にはねられました。被害者は、この事故により、重篤な脳損傷を負いました。
ご依頼内容
高次脳機能障害で後遺障害1級が認定された被害者のご家族から、加害者側への賠償請求のご依頼を受けました。
対応内容と成果
本件では、逸失利益(後遺障害が残ったことによる将来の減収分の賠償)が大きく争いになりなりました。
被害者は生まれつき重度の障害をもっていたのですが、加害者側の保険会社は、この点を指摘し、「事故前から重度の障害があったのだから、逸失利益の算定も、障害者の平均賃金をもとに算出すべきである」と主張してきました。これに対し、当方は、「被害者は、事故がなければ、健常者と同程度の収入を得る可能性が高かった」、「そもそも、障害者であることを理由に逸失利益を健常者よりも不利に算定するのは、憲法が定める法の下の平等の理念に反する」と主張しました。
事故当時、中学生であった被害者が、将来、健常者と同程度の収入を得る可能性が高かったことを立証するために、小学校・中学校時代の先生や幼馴染など、事故前の被害者のことをよく知る方々、10人近くに話を聞きに行き、裁判に協力してもらいました。また、障害者の就労支援を行っている団体を訪れ、現在は、障害者が健常者と同じように働ける就労環境が整っていることを立証しました。さらに、「障害者の逸失利益」について専門的に研究している大学教授に会いに行き、裁判に提出するための意見書を作成してもらいました。
これらの立証活動の甲斐もあり、高等裁判所の判決で、障害者の逸失利益が争点となったそれまでの裁判例の中では最も高水準の逸失利益が認定されました。
また、本件では、将来介護費用についても争いになりました。
被害者は、障害の程度が重かったことから、両親による介護を行っていたのですが、加害者側は、「1名による介護で十分である」と主張してきました。
2名による介護が必要であることを立証するため、被害者を担当したことのあるほぼ全ての医師に会いに行って話を聞き、裁判に提出する意見書の作成に協力してもらいました。また、被害者が利用する介護施設の話も聞き、介護のプロの視点からの介護の必要性について意見書を作成してもらいました。
このような立証の結果、高等裁判所の判決では、2名による介護が必要であることが認められました。
総括・コメント
本件の被害者は、事故により、若くして重篤な障害を負い、その結果、その後の人生が大きく変わることとなりました。
生まれもった障害を克服するため、依頼者は、幼い頃から血のにじむような努力をして、結果を出していました。そのような人生を歩んできたところ事故にあい、しかも、加害者側は、「事故前から重度の障害があったのだから、逸失利益の算定も、障害者の平均賃金をもとに算出すべきである」と、依頼者のそれまでの努力を否定するような主張をしてきました。このような主張は、依頼者とご家族が、それまで歩んできた人生を否定するものであり、依頼者や依頼者の家族には、到底受け入れられるものではありませんでした。その意味で、本件は、依頼者と依頼者の家族の尊厳をかけた戦いでした。
依頼者とご家族の、このような思いを背負うという意味で、とても重圧のかかる仕事でしたが、考え得る限りの立証を尽くし、良い結果を出すことができました。
私にとっても、交通事故の被害者側の弁護士としての重責や、やりがいを強く感じることができたとともに、成長を実感することができた事案でした。
依頼者やご家族からは、裁判が終わった後も、時々、近況のご報告をいただいており、日々の仕事の励みになっています。