【解決事例/043】男性の醜状障害につき、異議申立ての結果、9級16号の後遺障害が認定され、逸失利益を含め約1319万円の賠償を得たケース
依頼者属性 | 性別 | 男性 |
---|---|---|
年代 | 20代 | |
職業 | 会社員 | |
事故態様と相談 | 事故場所 | 大分県中津市 |
事故状況 | 友人の車に同乗中、交差点で右折をした友人の車が対向の直進車両と衝突した。 | |
相談のタイミング | 約6か月後 | |
相談のきっかけ | 保険会社から提示を受けた賠償金の金額が妥当であるかどうかを知りたい。 | |
怪我と後遺障害 | 傷病名 | 前額部挫創、頭部打撲 |
自覚症状 | 右眉部の線状痕 | |
後遺障害等級 | 9級16号 | |
保険会社提示額 | 損害項目 | 最終受取金額 |
金額 | 約2万円 | |
備考 | 治療費等を含む賠償総額は、約15万円 | |
獲得賠償金額 | 損害項目 | 最終受取金額 |
金額 | 約1300万円 | |
備考 | 治療費等を含む賠償総額は、約1315万円 |
相談から解決までの流れ
友人の車に同乗中に事故にあい、前額部挫創、頭部打撲の怪我を負ったケースです。事故から約6か月を経過したところで、任意保険会社から示談金として約2万円を支払うという提示を受け、この金額が妥当であるかどうか知りたいということで相談にみえました。
相談時に後遺症の有無について確認をしたところ、依頼者には、右眉部に複数の傷痕が残っていました。自賠責保険の後遺障害の認定基準に該当すると思われましたが、任意保険会社からは後遺障害の手続についての説明を受けていませんでした。そこで、後遺障害の等級が認定される可能性を説明し、受任に至りました。
受任後、被害者請求の方法で後遺障害の等級認定の手続を取ったところ、「外貌に醜状を残すもの」として、自賠責保険の12級14号の後遺障害が認定されました。
しかし、自賠責保険の等級認定の基準では、隣接する線状痕については長さを合算して等級認定を行うということになっているのに、初回認定は、この基準に反する認定をしていたので、異議申立ての手続を行いました。その結果、当方の主張が認められ、2つの線状痕について、「外貌に相当程度の醜状を残すもの」として、自賠責保険の9級16号の後遺障害が認定されました。
本件では、被害者は、同乗中の事故であり、両方の車両の自賠責保険に対して、保険金請求ができました。したがって、異議申立てにより9級16号の認定が出た後、もう一方の自賠責保険に対して、自賠責保険金の請求をし、これにより、2つの自賠責保険から賠償金を得ました。
自賠責保険金の受領後、任意保険会社と最終的な賠償金の支払交渉を行いました。任意保険会社は、本件の醜状障害では、逸失利益は発生せず、既に、自賠責保険金からの保険金で損害の全額の賠償を受けているから、任意保険会社が支払うべき賠償金はないとの主張でした。これを受け、当事者どうしの任意の交渉での解決は困難であると判断し、交通事故紛争処理センターに、和解あっせんの手続を申し立てました。
紛争処理センターでの手続では、依頼者の醜状障害の程度を示す資料として直近で撮影した顔写真を提出するとともに、依頼者の陳述書を作成して提出しました。陳述書では、依頼者の職務の内容を詳細に説明し、対人関係における意思疎通を阻害するという観点で職務に支障があること、将来の昇進にも悪影響を及ぼす可能性があること、若年であるため転職の可能性もあり、転職の際に不利益を被るおそれがあることなどを説明しました。しかし、紛争処理センターでの和解あっせん案では、逸失利益が認められませんでした。
そこで、当方は和解あっせん案を受け入れず、手続きは、次の段階である審査手続に移行しました。審査期日は、審査を担当する嘱託弁護士に改めて当方の主張を直接説明を行うとともに、男性の醜状障害で逸失利益を認めた裁判例を提出しました。審査期日の後、裁定が出され、逸失利益として約570万円が認められ、また、後遺障害慰謝料も通常の9級の金額の約1割増しの750万円が認められました。その結果、自賠責保険から受領した金額に加え、約87万円の賠償を任意保険会社から得ることができました。
本件は、任意保険会社による提示金額が約2万円から約600倍に増額した事案で、依頼者に非常に御満足いただけました。
担当弁護士の振返りポイント(倉橋)
弁護士が入ることにより、大きく賠償額を増やせたケースです。ポイントは、①適正な後遺障害の等級が認定されたこと、②両方の車両に自賠責保険を請求したこと、③紛センの裁定で醜状障害の逸失利益が認められたことです。
本件では、異議申立てを行った結果、9級12号の後遺障害の等級が認定されたことが、まずポイントとなります。依頼者は、相談にみえる前は、任意保険会社から後遺障害の手続について説明を受けておらず、低額の約2万円の賠償金での示談をしてしまうおそれもありました。示談をする前に、相談にみえられたことが何よりでした。
また、異議申立てで等級が12級から9級に上がったことで、賠償金額が大きくアップしました。
本件では、自賠責保険が2つ使えるケースでしたので、2つの自賠責保険に保険請求をし、合計1232万円の賠償金を得ました。男性の醜状障害で逸失利益を認めない裁判例も多く、本件で任意保険会社と逸失利益を争っても負ける可能性も十分にあったことから、2つの自賠責から、まず支払いを得ることが得策でした。
醜状障害の逸失利益については、醜状の内容及び程度から醜状障害が職務に与える資料を、円滑な対人関係の阻害要因となることを具体的に主張立証したことがポイントとなりました。
※個人が特定されない範囲で内容を加筆修正しています。
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